小島希世子『ホームレス農園』河出書房新社、2014年

 「働きたくても仕事のないホームレスと、働き手がいなくて困っている農業をつなげば、どちらも助かるんじゃないか」。誰でも考えるようなことで、僕も考えたことがある。しかし、実際にやってみるとなかなか上手くいかないらしいことを、たまに見聞きする情報から感じ取る。ところが、この本を書いた小島さんはこの難業をどうやらうまいことやっているらしい。何かでこの本のタイトルを目にして、以前ラジオフォーラムにゲストで出ていた人かなと思ったらやはりそうだった。

 実際読んでみて思ったのは、やはり「働きたくても仕事のないホームレスと、働き手がいなくて困っている農業をつなげば、どちらも助かるんじゃないか」というのは、理にかなっているようであまりに浅い考えなんだなということだった。小島さんは起業家としての才能と農業への情熱を兼ね備えた人なのだと思う。その小島さんをしてどうにか「ホームレスやニートの就農体験」が軌道に乗り、実際就農に結びついた事例が生まれかけているといったところだ。

 小島さんの取り組みは大したものだし、この取り組みによって救われた人たちもたくさんいるのだと思うけど、ついていけなかった人たちも数多いのだと思う。ついていけなかった人がいることを問題としたいわけではない。僕が思ったのは、「働きたくても仕事のないホームレスと、働き手がいなくて困っている農業をつなげば、どちらも助かるんじゃないか」というには、現実はあまりに課題が多いということだった。ホームレス支援のモデルの一つとして就農に活路を見出すのは厳しい。そもそもそういう問題じゃないんだなとようやく気付いた。